「子どもの矯正は、何歳から始めればよいですか?」
当院では、年齢だけで小児矯正の開始時期を決めません。大切なのは、お子さんがこちらの指示を理解し、一緒にトレーニングや装置の使用に取り組める状態にあることです。
同じ年齢でも、理解力や生活リズム、口腔内の状態、ご家族の協力体制は異なります。そのため、治療を始められる時期にも個人差があります。意思の疎通がまだ難しい時期は、基本的には経過を観察し、必要なタイミングを見極めます。
ただし、観察することは何もしないことではありません。成長を見守りながら、口呼吸やお口ポカン、受け口、噛み合わせのずれなど、将来の治療に影響し得るサインを見逃さないことが大切です。
当院が小児期に最も大切にしていること
当院の小児矯正は、単に歯を並べる治療ではありません。
骨格、呼吸、舌や唇の使い方、飲み込み方、歯が生えるスペースを含めて確認し、お子さんが本来持つ成長の力をできるだけ自然な方向へ導くことを目指します。
とくに当院が重視しているのが、口呼吸の原因を確認し、必要な対応につなげることです。
いつも口が開いている、唇を自然に閉じにくい、鼻づまりが多い、いびきをかく、睡眠中の呼吸が気になる。このような状態が続く場合、歯並びだけの問題として扱うべきではありません。鼻や喉の状態、アレルギー、睡眠、舌や唇の機能などを含めて考える必要があります。
口呼吸と顔貌・噛み合わせには関連が報告されていますが、すべてが口呼吸だけで決まるわけではありません。だからこそ、矯正装置だけで解決しようとせず、原因を整理し、必要に応じて耳鼻咽喉科などとも連携することを大切にしています。
お口ポカンを「癖だから」と見過ごさない
お口ポカンは、単なる見た目の問題ではありません。
口が開いた状態が続く背景には、鼻呼吸のしにくさ、舌の位置、唇を閉じる力、飲み込み方、歯列や骨格の問題が関係していることがあります。お子さんによって原因は異なるため、「口を閉じましょう」と声をかけるだけでは十分でない場合があります。
成長期に、鼻で呼吸し、舌が適切な位置にあり、唇を自然に閉じられる環境を整えることは、歯並びだけでなく、口元と顔貌のバランスを考えるうえでも重要です。
成人の矯正・再建治療を多く行う当院だからこそ、小児期の大切さを感じています
当院では、小児矯正だけでなく、大人の矯正治療や、噛み合わせが大きく崩れた口腔内を再建する治療にも多く取り組んでいます。
成人の治療では、歯並びだけを整えて終わることは少なくありません。長年の噛み合わせによるすり減り、歯を失ったことによる傾きや挺出、過去の治療によって変化した歯の形、歯周組織の問題などを一つずつ整理し、口全体のゴールから逆算して治療を組み立てます。
治療をしながら、ふと考えることがあります。
「この方が子どもの頃から、骨格や呼吸、舌や唇の使い方、噛み合わせの問題に介入できていたら、将来は少し違っていたのではないか」
もちろん、すべての問題を小児期に防げるわけではありません。また、子どものうちに矯正をすれば、将来の治療が必ず不要になるわけでもありません。
それでも、成長期に問題の芽を見つけ、正常な発育を妨げる要因を減らし、適切なタイミングで介入することには大きな意味があります。成人になってから失われた歯や噛み合わせを「治し直す」だけでなく、将来そのような負担を抱えるお子さんを少しでも減らしたい。それが、当院が小児矯正を大切にする理由です。
早めに相談していただきたいサイン
- いつも口が開いている、お口ポカンが気になる
- 鼻づまりが多い、いびきがある、睡眠中の呼吸が気になる
- 下の前歯が上の前歯より前に出る、受け口の傾向がある
- 奥歯の噛み合わせが横にずれている、左右差がある
- 乳歯の時期から歯が重なっている、顎が狭く見える
- 舌を前に出す、飲み込むときに唇や顎に強く力が入る
- 指しゃぶりなどの習癖が続いている
乳歯のすき間そのものは、多くの場合、永久歯が生えるための自然な余白です。反対に、乳歯が隙間なくぴったり並んでいる、またはすでに重なっている場合は、永久歯が生えるスペースを確認する意義があります。ただし、すき間の有無だけで治療の必要性は決めません。
いつ治療を始めるのか
当院では、乳歯が生えそろった頃から、お口全体の成長を確認します。
しかし、診査を始める時期と、実際に治療を始める時期は同じではありません。お子さんが説明を理解し、こちらの指示に応じて、一緒にトレーニングや装置の使用に取り組めることが、治療開始の大切な条件です。
意思の疎通がまだ難しい時期は、基本的には経過観察を行います。その間に、呼吸、姿勢、口唇の閉じ方、舌の使い方、噛み合わせの変化を確認し、治療ができる状態になった時点で、必要な方法を提案します。
一期治療と二期治療について
小児期に行う治療は、一期治療だけで必ず完結するものではありません。
一期治療では、顎の成長、口呼吸や低位舌などの習癖、永久歯が並ぶための環境に早期に働きかけます。一方で、永久歯が生えそろった後の歯並びや噛み合わせまで、すべてを一期治療だけで整えられるとは限りません。
成長の途中で予測と異なる変化が起こることもあるため、永久歯列期に二期治療が必要になる場合があります。当院では「二期治療を避けること」だけを目的にせず、将来の治療の負担を減らし、必要になった場合もより無理のない治療につなげることを大切にしています。
反対に、一期治療を行うことで、二期治療が不要になる、治療期間を短くできる、抜歯の可能性を減らせる可能性もあります。ただし、成長や歯の大きさ、習癖、永久歯の生え方には個人差があるため、治療開始時に結果を保証することはできません。定期的に成長を確認し、その時点で最も適切な選択を一緒に考えます。
小児矯正は、将来の歯並びや治療内容を幼少期に決め切る治療ではありません。成長や永久歯の生え方には予測できない部分があるため、当院では定期的に変化を確認しながら、将来の選択肢を不必要に狭めないことを大切にしています。
お子さんごとに、必要な方法を組み合わせます
当院では、診査・診断の結果に応じて、以下を組み合わせます。
- MFT(口腔筋機能療法)
- プレオルソ
- マイオブレース
- インビザライン IPE
- インビザライン・ファースト
MFTでは、舌の安静時の位置、唇の使い方、飲み込み方などを確認し、必要に応じて練習を行います。プレオルソやマイオブレース、インビザライン IPE/インビザライン・ファーストも、装置を付けること自体が目的ではありません。
最終的にどのような噛み合わせ、歯列、口元を目指すのかを考えたうえで、そのお子さんに必要な方法だけを選択します。
よくあるご質問
乳歯のすきっ歯は、矯正した方がよいですか?
多くの場合、すぐに治療は必要ありません。乳歯のすき間は永久歯が生えるための余白として自然に見られることがあります。顎の大きさ、永久歯の大きさ、噛み合わせを確認したうえで判断します。
乳歯がぴったり並んでいる方が、問題ですか?
永久歯のための余白が少ない可能性はあります。特に乳歯の時期から重なりがある場合は、将来の叢生を見据えて診査する意義があります。ただし、ぴったり並んでいるだけで治療を決めることはありません。
お口ポカンは矯正で治りますか?
原因によります。舌・唇の機能や歯列が関係する場合もありますが、鼻づまりや睡眠、耳鼻咽喉科的な問題が関係していることもあります。当院では原因を整理し、必要に応じて他科とも連携して考えます。
小児矯正をすれば、将来必ず矯正が不要になりますか?
将来の本格矯正が不要になることもありますが、永久歯がそろった後に追加の矯正が必要になることもあります。当院では、将来の負担を減らし、より無理の少ない治療につなげることを目指します。
お子さんの将来を見据えた、最初の相談を
小児矯正は、今の歯並びを整えるためだけの治療ではありません。顎の成長、呼吸、舌や唇の機能、永久歯が生えるためのスペースまで含めて、将来のお口を設計する治療です。
「まだ乳歯だから」と迷っている段階でも構いません。今すぐ治療が必要か、経過を見てよいか、何に注意して成長を見守るべきかを、一緒に確認しましょう。
※治療開始時期、適応、治療期間、効果には個人差があります。必要に応じて他科との連携をご提案する場合があります。
お口ポカン・口呼吸の背景、鼻や喉の状態、MFTについては、子どものお口ポカン・口呼吸|歯並びだけではない原因と、当院がまず確認することで詳しく解説しています。
治療後も、成長と噛み合わせを見守ります
小児矯正は、装置を外した時点で終わりではありません。永久歯の生え方、顎の成長、噛み合わせ、舌や唇の使い方は成長とともに変化します。当院では、治療後も定期的に状態を確認し、その時点で必要な対応を考えます。きちんと治療を受けた結果を長く守ることまで含めて、当院は治療と考えています。
参考文献
- Dimberg L, et al. Prevalence and change of malocclusions from primary to early permanent dentition: a longitudinal study. Angle Orthod. 2015.
- Nagahara K, et al. Longitudinal changes in the skeletal pattern of deciduous anterior crossbite. Angle Orthod. 1997.
- Basheer B, et al. Influence of mouth breathing on the dentofacial growth of children: a cephalometric study. J Int Oral Health. 2014.