前歯の修復方法も、大きく直接法と間接法に分かれます。
直接法は、口腔内で歯科用樹脂を盛り重ねるダイレクトボンディングです。間接法は、口腔外で製作したラミネートベニアやクラウンを、後日歯へ接着・装着する方法です。
前歯の修復治療では、むし歯や欠けを治すだけでなく、歯の長さ、幅、色、透明感、表面の質感、歯肉との関係、発音、噛み合わせまで考える必要があります。
当院では、ダイレクトボンディング、ラミネートベニア、クラウンを材料名だけで選びません。どこまで形態と色調を変える必要があるか、どの程度歯質を残せるか、治療前の歯の位置や色を利用できるかを診断します。
当院の前歯部修復料金
以下はすべて税込です。
ダイレクトボンディング
| 区分 | 料金(税込) | 主な適応 |
|---|---|---|
| 前歯部・小範囲 | 22,000円/1部位 | 切縁・隅角を含まない小さなむし歯、限局した既存レジンの置換 |
| 前歯部・審美形態修復 | 55,000円/1歯 | 切縁・隅角を含む破折、すき間の閉鎖、形態・色調の改善 |
| 正中離開の閉鎖 | 110,000円/2歯セット | 上顎前歯2本の形態を整えて正中のすき間を閉じる治療 |
小範囲修復は、同じ歯の2部位で44,000円です。3部位以上または広範囲の場合は積み上げず、審美形態修復55,000円を適用します。
正中離開は、中央の前歯2本を左右から修復して、歯の幅と対称性を整えながらすき間を閉じるため、2歯セット110,000円です。片側1歯だけへ材料を足す治療ではありません。
正中以外のすき間や、3歯以上の形態調整が必要な場合は、修復する歯ごとに審美形態修復55,000円を算定し、治療前に対象歯と総額を提示します。
料金には、接着前の丁寧な歯面清掃、原則として行うラバーダム防湿、接着処理、レジンの積層充填、形態修正、咬合調整、研磨、治療後の軽微な調整を含みます。
ラミネートベニア・セラミッククラウン
| 項目 | 料金(税込) |
|---|---|
| ラミネートベニア | 132,000円/1歯 |
| セラミッククラウン | 132,000円/1歯 |
形成、印象、技工、プラーク、仮封材・仮着材、試適時の汚染等を除去する歯面清掃、材料に応じた接着前処理、試適、接着・装着、咬合調整、装着後の確認と軽微な調整を含みます。
接着前の歯面清掃は、単に表面を水洗するだけではありません。拡大視野で接着面を確認し、接着を妨げ得る残留物を丁寧に除去して、必要に応じて研磨・洗浄を繰り返します。当院では、この工程にも十分な時間を確保しています。
前歯の審美診断とプロビジョナルレストレーション(治療用の暫間修復物。以下、プロビジョナル)は、以下の本数別料金で別に設定しています。
前歯部審美診断・プロビジョナル料金
| 治療本数 | 料金(税込) |
|---|---|
| 1歯 | 22,000円 |
| 2歯 | 33,000円 |
| 3~4歯 | 55,000円 |
| 5~6歯 | 77,000円 |
この料金には、審美診断、外注による診断用ワックスアップ、必要に応じたモックアップ、1stプロビジョナル、最終確認用プロビジョナルを含みます。
前歯のベニア・クラウンでは、この本数別料金を適用します。臼歯部のプロビジョナル11,000円/1歯とは別の料金体系であり、重複して算定しません。
診断費が必要な理由
前歯は、修復物を装着してから長さや幅を大きく変えることに限界があります。また、1本だけを治療すればよいように見えても、左右の歯の幅、正中、歯肉、歯列との関係によって、別の歯を含めた方が自然になる場合があります。
審美診断費は、最終修復物の代金ではありません。どの歯を、どの程度治療すれば、過不足のない結果を得られるかを削る前に検討するための費用です。
最終修復費には、その診断結果に基づく形成、印象、技工、接着・装着などが含まれます。
すべてを削る前に確認できるわけではありません
診断用ワックスアップでは、歯の形態と長さの方向性を検討します。必要に応じてモックアップを使用し、口腔内で大まかな見え方を確認します。
ただし、発音、実際の食事での噛み合わせ、歯肉への圧力は、短時間のモックアップだけでは十分に判断できません。
当院では、削る前に主として形態と長さの方向性を共有し、機能面は最終修復物へ進むまでに段階的に確認します。
1stプロビジョナルと最終確認用プロビジョナル
1stプロビジョナルでは、ワックスアップで検討した形態を口腔内へ移し、支台歯の形成量、修復物に必要な厚み、歯肉との関係を確認・調整します。
その後、最終確認用プロビジョナルで次の項目を再確認します。
- 歯の長さと幅
- 歯肉の形態と圧力
- 清掃性
- 発音
- 口元との調和
- 噛み合わせ
- 実際に食事をした時の違和感
プロビジョナルレストレーションは、単に最終物ができるまで歯を隠す仮歯ではありません。最終修復物へ伝える形態・機能情報を確認するための治療工程です。
この具体的な流れは、実際の症例を用いた別コラムで詳しく紹介します。
ダイレクトボンディングが適する症例
ダイレクトボンディングは、不足している部分を目立たないように補う治療に適しています。
- 小さなむし歯
- 限局した既存レジンの置換
- 切縁・隅角の破折
- 小さなすき間
- 歯の幅や形態の部分的な修正
歯質削除量を抑えやすく、将来口腔内で修理しやすいことが利点です。
一方、複数の色、透明感、白斑、亀裂線などが混在する複雑な天然歯色を、広い範囲でレジンだけにより再現することには限界があります。
当院では、再現可能性を超えて「ダイレクトなら何でも自然に治せる」とは説明しません。
ラミネートベニアが適する症例
ラミネートベニアは、歯の表面を薄いセラミックで覆い、形態、表面の質感、色調をまとめて変える治療です。
- 歯の形態と質感を変えたい
- 広い範囲の色調を安定して整えたい
- ダイレクトでは複雑な色調再現が難しい
- エナメル質を利用した接着が可能
といった症例で検討します。
ダイレクトが「足りないところを補う治療」であるのに対し、ベニアは「表面全体の形態・質感・色を設計する治療」と考えると分かりやすくなります。
クラウンが必要になる症例
既にクラウンが入っている歯は、周囲の歯質が既に形成されているため、再びクラウンにせざるを得ないことが多くなります。
また、頬側だけでなく、舌側の形態、噛み合わせ、歯の厚みまで大きく変更する必要がある場合も、ベニアではなくクラウンを選択します。
強度を理由に、健全な歯を一律にクラウンにするわけではありません。残存歯質と接着条件を評価します。
ベニアの標準材料
当院では、審美性、強度、エナメル質への接着性のバランスから、二ケイ酸リチウムを第一選択とします。
ごく限局した部分ベニアで咬合条件が良く、より繊細な透明感・表面性状を求める場合は、長石系陶材を選択することがあります。
テトラサイクリン変色など暗い支台歯色を遮蔽したい場合や、高い明度の歯を希望される場合は、ジルコニアを検討することがあります。
ただし、ジルコニアベニアはガラスセラミックと接着方法が異なり、長期臨床データもまだ十分ではありません。支台歯色、必要な遮蔽、材料厚、接着条件を評価し、適応を限定します。
前歯クラウンの標準材料
支台歯や歯根の色を遮蔽する必要がある場合は、ジルコニアフレームに陶材を築成する構成を基本とします。ジルコニアで支台歯色を遮り、表面の陶材で色調、透明感、質感を表現します。
支台歯と歯根の色が良好で、その自然な色を生かせる場合は、二ケイ酸リチウムを選択します。二ケイ酸リチウムは支台歯色の影響を受けやすいため、症例選択が重要です。
材料ごとの追加料金ではなく、症例に必要な材料を当院が選択します。
ホワイトニングを先に行う理由
セラミックやレジンは、治療後にホワイトニングで白くできません。そのため、もともと非常に明るい歯を除き、当院では原則として修復治療前のホワイトニングをご提案します。
先に天然歯がどこまで明るくなるかを確認してから修復物の色を決めた方が、治療後の色調について後悔する可能性を減らしやすいためです。
ホワイトニング後は、色調と接着環境が安定するまで適切な期間を空けて修復治療を行います。
矯正治療を先に提案する場合
歯の位置がずれたまま修復だけで形態を整えようとすると、削る量が増えたり、左右の歯の幅が不自然になったりすることがあります。
矯正治療によって、削除量を減らせる、歯の幅の配分を自然にできる、歯肉や歯根の位置を整えられる場合は、先に矯正を行う選択肢を説明します。
費用と治療期間の制約があることも理解したうえで、修復単独でできる範囲と、矯正を併用した場合の違いをお伝えします。
ダイレクトからベニアへ移行する場合
当院で前歯部審美形態修復を行った後、治療日から3年以内に、同じ歯について当院がラミネートベニアへの移行を必要と判断した場合は、支払済み料金の50%を新しい治療費から控除します。
| 最初の治療 | 支払額 | 控除額 |
|---|---|---|
| 前歯部審美形態修復 | 55,000円 | 27,500円 |
切縁・隅角を含まない小範囲修復は対象外です。
適用は1回限りで、現金による返金や他の割引・保証との重複適用は行いません。定期メインテナンスとナイトガードの使用などを条件とします。
治療後早期に、当院の適応判断または接着上の問題による不具合と判断した場合は、50%控除ではなく、無償再修復または支払済み料金の全額充当を検討します。
保証
ラミネートベニアとセラミッククラウンは、装着日から3年間の院内保証です。
少なくとも6か月に1回の定期メインテナンスと、当院が製作または指定したナイトガードの継続使用が条件です。詳しい保証条件と保証対象外の対応は、接着修復の総論コラムで説明します。
表示している金額はすべて税込です。実際の治療本数、方法、総額は、診査・診断と審美診断によって異なります。