歯の内部には、神経や血管が通る「根管」と呼ばれる細い空間があります。むし歯や外傷などによって根管内に細菌が入り込んだ場合、感染した組織や古い材料を取り除き、洗浄・消毒して封鎖する根管治療が必要になります。
根管治療の費用を比べるとき、金額だけを見ても、その違いは分かりにくいものです。歯科用CTやエックス線による診断、唾液から治療する歯を隔離するラバーダム、拡大して確認するためのマイクロスコープ、治療中の再感染や歯の破折を防ぐための隔壁などが、料金に含まれているかどうかで治療工程が異なるためです。
当院の根管治療費は、決して小さな負担ではありません。そのため、価格の安さではなく、診断・感染管理・歯の保護・治療後の選択肢まで含めた総額を分かりやすくお伝えすることを大切にしています。
当院の根管治療費
当院の根管治療は、初めて根管治療を行う歯と、過去に治療した歯を再治療する場合を同じ料金とし、歯の種類による定額制としています。以下は自由診療の料金で、すべて税込です。
| 歯の種類 | 基本料金(税込) |
|---|---|
| 前歯 | 55,000円 |
| 小臼歯 | 77,000円 |
| 大臼歯 | 99,000円 |
根管の本数や形態は歯によって異なり、一般に奥歯ほど確認・処置する範囲が広くなるため、歯種別の料金としています。
基本料金に含まれるもの
- 診査・診断、治療計画
- 必要な歯科用CT・エックス線撮影
- ラバーダム防湿
- マイクロスコープの使用
- 根管治療前の隔壁形成
- 処置ごとに新品のNiTiファイルを使用
- クラウンの除去
- 通常の根管充填材の除去
- 根管形成、洗浄、消毒、根管充填
- 治療期間中の仮封
- 根管治療完了までに必要な通常範囲の治療回数
根管治療では、根管内の細菌を減らす処置だけでなく、治療中に唾液や細菌を入れない環境を整えることも重要です。日本歯内療法学会の診療ガイドラインでも、ラバーダム、器具の滅菌、緊密な仮封などによる感染予防を前提として、症例に応じた治療方法を選ぶことが示されています。
一方、支台築造、プロビジョナル、最終的な被せ物、特殊な追加処置は基本料金には含まれません。診断後に必要性を判断し、追加になる可能性がある費用をご説明します。
初回治療と再根管治療を同額にしている理由
再根管治療では、被せ物や土台、古い根管充填材を除去しなければならないことがあります。しかし、再治療だからという理由だけで一律に高い料金を設定すると、患者さんには総額が分かりにくくなります。
そこで当院では、初回治療と再根管治療の基本料金を同額とし、再治療で実際に必要になったコア除去や破折ファイル除去などの特殊処置だけを明確に加算します。
「再治療だから高い」のではなく、その歯にどの処置が必要なのかを見積書で確認できる料金体系です。
隔壁・仮封・プロビジョナルは、それぞれ役割が異なります
当院では、根管治療の前に隔壁を形成し、原則としてプロビジョナルまで装着してから治療を進めます。
隔壁形成
残っている歯質が少ない歯に壁を作り、ラバーダムを安定させ、治療中の唾液や細菌の侵入を防ぎやすくする処置です。残存歯質を保護する役割もあり、基本料金に含まれます。
仮封
通院と通院の間に、根管内へ細菌が入り込まないよう治療用の穴を一時的に封鎖する処置です。基本料金に含まれます。
プロビジョナル
歯冠形態、噛み合わせ、審美性などを一時的に回復する「仮歯」です。仮封とは目的が異なり、当院の根管治療では原則として作製します。料金は1歯11,000円(税込)です。
プロビジョナルには、治療中の歯の移動を抑え、噛み合わせや隣の歯との位置関係を保つ役割があります。また、仮封を外力から保護し、補綴的な観点では歯肉の形態を温存して、プラークが停滞しにくく炎症が起こりにくい環境を整えるためにも重要です。
通常使用による調整や軽微な修理は原則として追加料金をいただきません。ただし、紛失や患者さんのご都合による破損で再製作する場合は、1歯11,000円(税込)です。
根管治療が終わっただけでは、歯の治療全体が完了したとは限りません。状態に応じて支台築造と最終補綴を行い、歯を再び細菌や過大な力から守るところまで計画することが大切です。
神経を残せる可能性がある場合の歯髄温存療法
むし歯が深くても、歯髄の状態によっては、すぐに神経をすべて取り除くのではなく、歯髄温存療法を検討できる場合があります。当院の歯髄温存療法は44,000円(税込)/1歯です。
料金には、歯髄の状態に関する診査・診断、必要なエックス線・CT撮影、ラバーダム防湿、マイクロスコープ、むし歯の除去、直接覆髄または部分断髄、MTA等の生体親和性材料、処置部の封鎖、通常の経過確認を含みます。最終修復物、プロビジョナル、クラウン等は別料金です。
ただし、処置前の検査だけでは歯髄の炎症の広がりを完全に判断できないことがあります。温存療法後に痛みや感染が生じ、同じ歯の根管治療が必要になる場合もあります。
当院で歯髄温存療法を行った後、3年以内に同じ歯の根管治療が必要となり、当院で治療する場合は、根管治療基本料金から22,000円を減額します。
| 根管治療へ移行する歯 | 通常の基本料金 | 22,000円減額後の支払額 |
|---|---|---|
| 前歯 | 55,000円 | 33,000円 |
| 小臼歯 | 77,000円 | 55,000円 |
| 大臼歯 | 99,000円 | 77,000円 |
この減額は根管治療の基本料金にのみ適用し、コア除去、支台築造、プロビジョナル、そのほかの追加処置には充当しません。
歯髄温存療法は、神経を必ず残せることを保証する治療ではありません。3年間の減額制度も、歯髄を3年間保存できることを保証するものではなく、歯髄を残すために行った治療を考慮して、その後の患者さんの負担を軽減するための取扱いです。
追加費用が生じる可能性のある処置
| 追加処置 | 料金(税込) | 算定単位 |
|---|---|---|
| コア除去 | 22,000円 | 1歯 |
| 破折ファイル除去 | 22,000円 | 1本 |
| パーフォレーションリペア | 22,000円 | 1部位 |
| 支台築造 | 22,000円 | 1歯 |
| プロビジョナル | 11,000円 | 1歯 |
破折ファイルが複数ある場合や、穿孔部位が複数ある場合は、本数・部位数に応じて算定します。費用が大きくなる可能性があるときは、可能な限り処置前に見積額をご説明します。
画像検査をしても、古い材料を外して根管内を直接確認するまで分からない問題があります。そのため、初回の見積書では「確定している費用」と「治療中の所見により追加になり得る費用」を分けてご案内します。
治療を始めてから歯根破折が見つかった場合
歯根破折は、エックス線やCTだけでは確定できず、被せ物や土台を外し、マイクロスコープで歯質を確認して初めて分かることがあります。
当院の歯根破折診断料は、1歯22,000円(税込)です。必要な画像の確認、マイクロスコープによる精査、必要に応じた染色、保存可能性の判断、今後の治療方法の説明を含みます。
破折により根管治療を中止する場合
治療開始後に破折が判明し、根管治療を中止する場合は、根管治療の基本料金を請求しません。コア除去など実際に行った処置と、歯根破折診断料のみを算定します。
例えば、コア除去後に歯根破折が確認されて治療を中止した場合は、コア除去22,000円と歯根破折診断22,000円の合計44,000円(税込)です。
保存治療を継続する場合
破折が認められても、状態と患者さんのご希望を踏まえて保存治療を継続し、根管治療を完了する場合は、歯根破折診断料を重ねて請求しません。歯種別の根管治療基本料金を適用します。
ただし、破折した歯を治療して残すことには限界があり、長期的な保存を保証できるものではありません。予想される経過や他の治療選択肢をご説明した上で判断します。
当院で同部位のインプラント治療へ直ちに移行する場合
根管治療開始直後に歯根破折が判明し、同じ部位を当院でインプラント治療へ移行する場合は、診断費用の重複を避けるため、通常22,000円のインプラント診断料を22,000円減額し、実質無料とします。
コア除去などの実施済み処置と歯根破折診断料は通常どおり算定します。この取扱いは、後述する根管治療完了後の3年間の移行支援とは別の制度です。
通常の根管治療で治癒が得られない場合
根管治療後も病変や症状が改善しない場合などには、歯根の先端側から感染源へ対応する歯根端切除術や、一度抜歯して処置を行い元の位置へ戻す意図的再植術を検討することがあります。
| 外科的歯内療法 | 通常料金(税込) |
|---|---|
| 歯根端切除術 | 55,000円/1歯 |
| 意図的再植術 | 55,000円/1歯 |
料金には、術前診査、必要なCT撮影、局所麻酔、マイクロスコープの使用、外科処置、必要な逆根管形成・逆根管充填、縫合、抜糸、通常の術後確認を含みます。
当院で根管治療を行った歯が、治療終了後1年以内に外科的歯内療法へ移行する場合は33,000円(税込)です。
外科的歯内療法は、すべての歯に適用できるわけではありません。歯根の形、病変の位置、残存歯質、歯周組織、全身状態などを確認して判断します。
歯牙保存治療後の3年間のインプラント移行支援
根管治療は歯を残すための治療ですが、治療を行えば必ず歯を保存できるわけではありません。治療後に破折や再感染などによって保存が難しくなる可能性があります。
当院では、歯を残すために行った治療費のすべてが無駄になったように感じられないよう、一定の条件を満たす場合に「歯牙保存治療後のインプラント移行支援」を設けています。
| 抜歯までに当院で完了していた治療 | インプラント治療費からの減額 |
|---|---|
| 根管治療のみ | 55,000円 |
| 支台築造・プロビジョナルまで | 55,000円 |
| 新しい自費最終補綴物まで装着 | 110,000円 |
3年以内であれば、経過した期間にかかわらず減額額は一律です。
最終補綴物を装着していない場合は根管充填完了日、当院で新しい自費最終補綴物まで装着した場合はその装着日を起算日とします。
適用条件
- 同じ歯・同じ欠損部位を、当院でインプラント治療すること
- 原則3か月に1回、少なくとも6か月に1回のメインテナンスを受けていること
- 指示された場合はナイトガードを使用していること
- 正当な理由なく治療を中断していないこと
- 大規模GBRやサイナスリフトなど、通常範囲外の追加処置は別料金となること
- 他院で行うインプラント治療への返金・充当ではないこと
これは、歯を3年間保存できることを保証する制度ではありません。治療後3年以内にやむを得ず保存困難となった場合に、それまでに当院で行った歯牙保存治療を考慮し、同部位のインプラント治療費の一部を減額する制度です。
当院で治療するか、専門医院へ紹介するか
当院は歯内療法専門医院ではありません。一方、総合歯科医院として、根管治療だけでなく、残存歯質、歯周組織、噛み合わせ、その後の支台築造や補綴、保存が難しくなった場合の治療まで含めて診断します。
当院で適切に対応できると判断した症例には、必要に応じてCT、ラバーダム、マイクロスコープを用いた根管治療を行います。ただし、高い専門性や特殊な技術・設備が必要と判断した症例については、歯内療法を専門とする医療機関をご紹介します。
すべての症例を当院で治療することではなく、その歯にとって適切な治療場所を選ぶことも診断の一部だと考えています。
年齢だけではなく、これから何年噛むのかを考えます
歯を残せる可能性があるとき、「治療できるか」という点だけでなく、治療後にどの程度安定して使えると見込めるか、そのために必要な費用や通院負担はどの程度かを考える必要があります。
根管治療の結果は、時間とともに変化します
根管治療の成否は、治療が終わった時点で永久に確定するものではありません。長期追跡研究では、根管治療後の成功率と歯の保存率は時間とともに低下し、再治療や抜歯が必要になる可能性が累積していくことが示されています。
ある25年間の追跡研究では、治療成功率は約5年後85%、20年後60%、歯の保存率は約5年後90%、20年後50%と報告されています。一方、定期的な管理を受けていた患者さんを対象とした別の研究では、歯の保存率は10年後97%、20年後81%でした。研究対象や治療環境、「成功」の定義が異なるため、これらの数字をそのまま個々の患者さんの予後として当てはめることはできません。しかし、治療後の予後は一定ではなく、経過年数とともに変化するという点は共通しています。
時間の経過に伴い、再感染、補綴物の劣化、二次的なむし歯、歯周病、噛み合わせによる負担などが重なることがあります。過去のむし歯治療、根管治療、支台築造、被せ物の交換が重なった歯では、残存歯質が少なくなり、亀裂や破折、再治療の難しさが問題になることもあります。
ただし、「治療後何年を過ぎたら急に難治性になる」「何歳以上なら歯根破折する」といった明確な境界が確認されているわけではありません。実際の判断では、経過年数だけでなく、残存歯質、亀裂・破折の有無、根尖病変、歯周組織、補綴物の状態、噛み合わせ、過去の治療歴などを確認します。
年代と将来の治療負担を含めて考えます
当院では、50~60代の患者さんについては、根管治療やその後の補綴に必要な総費用と見込まれる予後を比較し、保存治療を行うのか、抜歯して欠損補綴へ進むのかを十分に検討していただきます。
70代以降では、目の前の歯を一時的に残すことだけでなく、将来その歯が保存困難になったときに、抜歯や再治療、インプラント手術を受けられる全身状態や体力が保たれているかという点も重要です。そのため、保存の予測性が低い歯については、状態が安定している時期に抜歯し、インプラントを含む治療によって噛める状態を整える選択肢を、より積極的にご説明します。
一方、年齢だけを理由に抜歯やインプラントを決めることはありません。高齢の患者さんでもインプラントが適切な場合がある一方、全身疾患、服薬、フレイル、清掃能力、通院・メインテナンスの継続性、患者さんの希望などによっては、保存治療やブリッジ、義歯などが適することもあります。
当院が目指しているのは、単に歯を長く残すことでも、早くインプラントへ置き換えることでもありません。患者さんが将来、治療を受けることが難しくなった時期にも、できる限りしっかり噛める状態で生活できるように、現在の歯の状態と将来の治療負担を一緒に考えることです。
根管治療の主なリスクと限界
自由診療の根管治療であっても、治癒や歯の長期保存を保証することはできません。
- 根管が細い、湾曲している、閉塞しているなどの理由で、すべての根管を処置できないことがあります。
- 治療器具の破折、歯根や歯質の穿孔、ひび・破折が生じる、または治療中に判明することがあります。
- 治療後に一時的な痛みや腫れが生じることがあります。
- 病変や症状が改善せず、外科的歯内療法、再治療、抜歯が必要になることがあります。
- 残っている歯質が少ない歯や破折のある歯は、治療後も破折・脱落する可能性があります。
- 治療後は支台築造や被せ物による封鎖・保護、噛み合わせの管理、定期的なメインテナンスが必要です。
治療前の検査だけでは確認できない問題もあるため、治療中に新しい所見が見つかった場合は、処置を続けるか中止するか、専門医院へ紹介するか、抜歯して別の方法へ進むかをご相談します。
見積書では「何が含まれているか」を確認してください
根管治療の費用を検討するときは、基本料金の金額だけでなく、次の点を確認することが大切です。
- CTやエックス線、ラバーダム、マイクロスコープは料金に含まれるか
- 隔壁形成やクラウン除去、古い根管充填材の通常除去は含まれるか
- 治療回数ごとの追加費用があるか
- 支台築造、仮歯、最終的な被せ物は別料金か
- コアや破折ファイルの除去、穿孔修復はいくらか
- 治療途中で破折が見つかり中止した場合、どのように精算するか
- 通常の根管治療で改善しない場合に、どのような選択肢と費用があるか
- 高難度症例を専門医院へ紹介する基準があるか
当院が根管治療を始める以上、その歯はできる限り残したいと考えています。そのために、診断、感染管理、隔壁、プロビジョナル、根管治療、その後の補綴まで、必要な工程を一つずつ丁寧に積み重ねます。
しかし、どれだけ適切に治療しても、治療を進めて初めて分かる歯根破折や、残存歯質の不足などによって、歯を残せないことがあります。歯を残すために治療を始めたにもかかわらず、抜歯という判断に至ることは、私たちにとっても非常に悔しいことです。
だからこそ、残せない可能性を曖昧にしたまま治療を進めるのではなく、歯を残せる可能性と限界、必要な工程と費用を率直にお伝えします。そして、万一保存できなかった場合にも、それまでの治療がすべて無駄だったと感じられないよう、次の治療まで責任を持って考えることが、当院の根管治療に対する姿勢です。
表示している金額はすべて税込です。実際に必要な処置は歯の状態によって異なるため、診査・診断後に個別の治療計画と見積書をご説明します。