All-on-4・All-on-6などの片顎・全顎インプラント治療は、失った歯をインプラントで補うだけの治療ではありません。見た目、発音、清掃性、噛み合わせ、顎の動きまで含めて再構成する治療です。そのため当院では、高額な治療だからこそ、手術を急がず全顎診断と1stプロビジョナル(最初の仮歯)を重視しています。
全顎治療は「インプラントの本数」だけでは比べられません
All-on-4は4本、All-on-6は6本のインプラントを基本として片顎の歯列を支える方法です。しかし、同じ本数でも、診断、ガイド手術、仮歯の段階、最終補綴の材質、骨や軟組織への対応、保証まで含まれる範囲は医院によって異なります。見積書では総額と治療工程を一緒に確認することが大切です。
当院が全顎診断を重視する理由
全顎治療では、残っている歯を保存できるか、上下の顎の位置関係、噛み合わせの高さ、顎関節、笑ったときの歯と歯ぐきの見え方、発音や清掃性まで検討します。部分的なCT所見やインプラントを埋める場所だけで判断すると、最終的な歯列とのずれが生じる可能性があります。
当院ではデジタル上で最終的な歯の形、噛み合わせ、残存骨、軟組織を重ね合わせ、外科と補綴の双方から過不足の少ない治療を計画します。これをバイオレストラティブなアプローチとして捉え、患者さんご自身の組織をできるだけ生かした低侵襲な治療を目指しています。
1stプロビジョナルは「診断装置」でもあります
1stプロビジョナルは、単に手術まで見た目を補う仮歯ではありません。噛み合わせの高さ、歯の長さ、口元の支え、発音、清掃のしやすさを実際の生活の中で確認し、治療計画を修正するための大切な診断装置です。
一度で完成形を決めつけず、1stプロビジョナル、手術後のプロビジョナル、最終補綴という段階を踏むことで、患者さんと確認しながら精度を高めます。
診断と1stプロビジョナルの費用(税込)
- 全顎診断料:220,000円
- 1stプロビジョナル:上顎165,000円/下顎165,000円
- 上下顎の診断と1stプロビジョナルを行う場合:合計550,000円
治療する顎や反対側の状態により必要な範囲は異なります。診断後に治療計画と総額をご提示します。
All-on-4の標準総額(税込)
- 全顎診断:220,000円
- 治療する顎の1stプロビジョナル:165,000円
- All-on-4治療:2,750,000円
- 標準総額:3,135,000円
All-on-6の標準総額(税込)
- 全顎診断:220,000円
- 治療する顎の1stプロビジョナル:165,000円
- All-on-6治療:3,300,000円
- 標準総額:3,685,000円
標準治療に含まれる主な内容
- 全顎的な診断とデジタルシミュレーション
- X-Guideまたは静的サージカルガイドを用いた手術
- インプラント体、埋入手術、必要な通常の二次手術
- 症例に応じた即時プロビジョナル、またはカスタムヒーリングアバットメント
- 手術後のプロビジョナルによる機能・審美・清掃性の確認
- チタンアバットメントとジルコニアによる最終補綴
- 印象・口腔内スキャン、ベリフィケーションインデックス、通常の調整
- 院内3年保証(保証条件に基づく)
即時プロビジョナルは必要な場合に作製します。初期固定や骨の状態によっては、手術直後に力をかけない方が治癒に有利です。その場合はカスタムヒーリングアバットメントを作製します。使用するパーツを共有するため、症例に応じてどちらを選んでも標準治療の料金は同じです。
可能な限り残存骨を生かし、不要な骨造成を避ける
当院では、GBRやサイナスリフトを一律に行うのではなく、残存骨を最大限に利用できる位置と角度をデジタル上で検討します。必要な骨造成まで否定するものではありませんが、治療侵襲、治療期間、合併症の可能性を考え、適応を慎重に判断します。
骨補填材の周囲に遅れて炎症が生じる「perigraftitis(ペリグラフタイティス)」も報告されていますが、現時点で発生頻度や原因、材料との関係は十分に確立していません。新しい知見を過度に断定せず、患者さんごとの利益とリスクを検討します。
インプラントオーバーデンチャーの目安(税込)
- 上顎4本支持:総額2,365,000円
- 下顎2本支持:総額1,705,000円
固定式のAll-on-4・All-on-6がすべての方に最適とは限りません。取り外し式義歯をインプラントで安定させる方法が、清掃性や費用、身体的負担の面で適する場合もあります。
追加費用となる可能性がある項目(税込)
- 反対顎の1stプロビジョナル:165,000円
- テンポラリーインプラント:1本22,000円
- 広範囲GBR:110,000〜165,000円
- ラテラルウィンドウ法:片側220,000円
- 審美的目的の軟組織処置:1部位44,000円
追加処置が必要と判断した場合は、理由と費用を治療前に説明し、見積書へ反映します。
保証について
標準治療には院内3年保証が含まれます。保証には定期的なメインテナンスなど所定の条件があります。長期的な安定には、治療後の噛み合わせの確認、セルフケア、専門的なメインテナンスが欠かせません。
全顎治療の見積書で確認したいこと
- 全顎診断と1stプロビジョナルの費用
- 手術当日の仮歯だけでなく、確認・修正する工程があるか
- ガイド手術、アバットメント、最終補綴の材質
- 骨造成や軟組織処置が追加となる条件
- 上下顎それぞれの範囲と、保証の適用条件
全顎治療は、インプラントの本数や最初に見える金額だけでなく、完成までにどのような確認工程が組み込まれているかが重要です。当院は、患者さんと仮歯を確認しながら、長く使いやすい口腔環境を一緒につくることを大切にしています。
費用全体の比べ方は「インプラント治療の費用は何を含めて考える?」、1本の部分治療については「インプラント1本の費用と標準治療」もご覧ください。
参考文献
- Pedrinaci I, et al. Clinical considerations for immediate loading of full-arch implant prostheses.
- International Team for Implantology (ITI). Consensus statements and clinical recommendations on full-arch implant rehabilitation.
- Do TA, et al. Perigraftitis following bone augmentation procedures: clinical considerations. 2026.
- Ravidà A, et al. Biological and prosthetic outcomes of full-arch implant-supported rehabilitations.
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の適応、治療期間、費用はお口の状態によって異なります。表示価格はすべて税込です。
最終補綴の材料と生物学的な考え方については「なぜ当院ではインプラントの最終補綴にジルコニアを標準採用しているのか」もご覧ください。