インプラント治療を検討するとき、多くの方が最初に気になるのは費用ではないでしょうか。
インターネットでは「インプラント1本○万円」「All-on-4は片顎○万円」といった価格が多数掲載されています。しかし、同じように見える金額でも、診断、手術用ガイド、仮歯、骨や歯肉への処置、アバットメント、最終的な歯、治療中の調整、保証など、含まれている内容は医院によって異なります。
表示価格だけを比較しても、最終的に必要となる治療の総額が分からないことがあるのです。
インプラントは、治療の目的ではありません
当院では、インプラントを「失った歯を補うための一つの選択肢」と考えています。歯を失ったからといって、すべての方にすぐインプラントを勧めるわけではありません。
本当に抜歯が必要なのか、歯を失った原因は何か、残っている歯や噛み合わせに問題がないか、ほかに適した治療法がないかを確認します。場合によっては、歯の保存、移植、接着ブリッジ、通常のブリッジ、義歯、経過観察が適していることもあります。
部分治療と片顎・全顎治療は分けて考えます
1本の欠損や一部分の欠損を補う「部分治療」と、All-on-4、All-on-6、インプラントオーバーデンチャーなどの「片顎・全顎治療」では、診断範囲と治療工程が大きく異なります。
具体的な内容は、当院の部分インプラント治療と、当院の片顎・全顎インプラント治療で詳しくご説明します。
当院の治療費は、決して安い金額ではありません
一方で、手術だけを基本料金とし、ガイド、アバットメント、仮歯、最終補綴などを一つずつ加算する料金体系でもありません。
症例に応じたX-Guideまたはスタティックサージカルガイド、インプラント体、埋入手術、アバットメント、ジルコニア最終補綴、精密印象、適合確認、通常調整、院内3年保証など、長期的に安定する治療のために通常必要となる多くの工程を標準料金に含めています。
即時プロビジョナルまたはカスタムヒーリングアバットメント、通常範囲の骨や歯肉への処置も、治療上必要と判断した場合は標準料金の範囲に含まれます。ただし、料金に含まれているからすべての処置を行うという意味ではありません。
見積書で確認していただきたいこと
- CTだけでなく、残存歯、歯周組織、最終的な歯、顎位、噛み合わせまで診断されているか
- 計画した位置へ埋入するための手術用ガイドが含まれるか
- 仮歯や治癒期間中の装置、調整・修理が含まれるか
- 骨造成や軟組織造成がどこまで含まれるか
- アバットメントと最終補綴、その材質が明確か
- 保証対象とメインテナンスなどの継続条件が明確か
骨造成は、多く行えばよいものではありません
GBRやサイナスリフトは、適切な症例では有効な治療です。一方で、手術範囲の拡大、腫れや痛み、治療期間の延長、創部の裂開や感染などの負担があります。
近年、移植骨や残存した骨補填材に細菌が感染して炎症を起こす「Perigraftitis(ペリグラフタイティス)」という概念が提唱されています。これは新しい概念で、発生率や診断基準はまだ確立していません。骨補填材を使用した治療全体では良好な長期成績も報告されており、材料そのものを一律に否定するものではありません。
当院では、必要性の低い骨造成や過剰な材料の使用を避け、患者さんご自身の残存骨を可能な限り利用します。
外科主導と補綴主導を統合するバイオレストラティブコンセプト
初期のインプラント治療は、骨のある位置を優先する「外科主導」が中心でした。その後、最終的な歯から逆算する「補綴主導」が重視されるようになりました。
近年提唱されているバイオレストラティブコンセプトでは、デジタル上で最終的な歯、噛み合わせ、残存骨、歯肉、インプラント、アバットメント、手術方法を同時に評価し、外科的、生物学的、補綴的に無理の少ない位置を探します。
当院でもCT、口腔内スキャン、デジタル上の歯の排列、X-Guideまたはスタティックサージカルガイドを活用し、機能、審美性、清掃性、長期安定性のバランスが取れた低侵襲な治療を目指します。
安いか高いかではなく、条件をそろえて確認すること
高額な治療だからこそ、複数の医院で話を聞き、費用を比較することは大切です。ただし、診断、ガイド、仮歯、アバットメント、最終補綴、骨や歯肉への処置、保証まで条件をそろえて確認してください。
必要のない処置はできる限り行わず、長期的な安定のために必要な診断や工程は省略しない。患者さんの年齢、健康状態、生活背景、ご希望、通院可能な期間、費用を踏まえ、過不足のない治療計画を一緒に考えます。
※治療の適応、必要な処置、治療期間、費用には個人差があります。実際の治療計画と総額は診査・診断後に決定します。
参考文献
- Pedrinaci I, et al. The Bio-Restorative Concept for Implant-Supported Restorations. J Esthet Restor Dent. 2024.
- Lim G, et al. Wound Healing Complications Following Guided Bone Regeneration for Ridge Augmentation. Int J Oral Maxillofac Implants. 2018.
- Do JH, et al. Perigraftitis, an independent biologic complication associated with implants placed in grafted bone. Clin Adv Periodontics. 2026.
最終補綴の材料と生物学的な考え方については「なぜ当院ではインプラントの最終補綴にジルコニアを標準採用しているのか」もご覧ください。