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COLUMN

コラム
30代男性|すきっ歯(正中離開・空隙歯列)をラミネートベニア6本で治療した症例

30代男性|すきっ歯(正中離開・空隙歯列)をラミネートベニア6本で治療した症例

30代男性|すきっ歯(正中離開・空隙歯列)をラミネートベニア6本で治療した症例

導入

上顎前歯部に複数のすき間がある治療前の口腔内写真
治療前。上顎前歯の中央だけでなく、前歯部の複数箇所に空隙を認めました。
上顎前歯6本へラミネートベニアを装着した治療後の口腔内写真
治療後。6本全体の幅・長さ・形態を整えながら、複数の空隙を閉じました。

「すきっ歯を治したい」とご相談いただいた30代男性の症例です。

すきっ歯の治療では、単にすき間を埋めればよいわけではありません。すき間の位置と大きさ、歯の幅や形、上下の歯の大きさのバランス、歯の位置、噛み合わせ、歯周組織、舌などの口腔機能を確認し、矯正治療、ダイレクトボンディング、ラミネートベニアなどから治療法を検討します。

この方には、上顎前歯のすき間に加えて、上下左右に第二乳臼歯(乳歯E)が残っていました。後続する永久歯は認められず、残っている乳歯を将来どのように管理するかも、治療計画を考えるうえで重要な条件でした。

全顎矯正、部分矯正、ラミネートベニア単独の利点と限界をご説明し、患者さんのご希望も踏まえて、上顎前歯6本をラミネートベニアで修復しました。

※治療方法や結果は、歯・骨・歯肉・噛み合わせ・生活習慣などによって異なります。本症例と同様の結果を保証するものではありません。

症例概要

項目 内容
年代・性別 30代男性
主訴 すきっ歯を治したい
初診 2025年7月
診断 正中離開、空隙歯列、乳歯晩期残存
治療部位 上顎右側犬歯から左側犬歯までの6本
治療内容 ラミネートベニア6本
使用材料 IPS e.max Press(二ケイ酸リチウムガラスセラミックス)
治療期間 約3か月
通院回数 7回
費用 現在の料金に換算した場合869,000円(税込)
診療区分 ラミネートベニア、審美診断・プロビジョナルは自由診療。スプリントは保険診療で別途
主なリスク・限界 歯質の切削、知覚過敏・歯髄症状、破折・欠け・脱離、接着界面の着色、二次う蝕、歯肉の炎症・退縮、色調差、歯が横に広く見える可能性、再治療の可能性

初診時の状態

赤い丸で示した上下左右の第二乳臼歯(乳歯E)の残存を確認した治療前のパノラマX線写真
治療前のパノラマX線写真。赤い丸で示した上下左右の第二乳臼歯(乳歯E)が残っており、その下に後続する永久歯は認められませんでした。
上顎前歯部に複数の空隙を認める治療前の上顎咬合面写真
治療前の上顎咬合面。歯を単純に大きくするのではなく、6本全体の幅・長さ・形態のバランスを検討しました。

口腔内では、上顎の正中を中心として前歯部に複数の空隙が認められました。上顎中切歯、側切歯、犬歯は、歯の幅が全体に狭い傾向でした。

パノラマX線写真では、上下左右に第二乳臼歯(乳歯E)が残存し、その下に後続する永久歯は認められませんでした。残存乳歯の歯根には、診査時点で異常な吸収は認められませんでした。

骨格的には下顎が上顎に対してやや大きい骨格性Ⅲ級の傾向がありました。一方、初診時点では前歯部にすき間はあるものの、噛み合わせや顎の機能運動に大きな問題は確認されませんでした。

行った診査・診断

治療法を決める前に、次の資料を用いて前歯部の審美性、歯の位置、骨格、噛み合わせを確認しました。

  • 口腔内診査
  • 口腔内写真
  • 顔貌写真
  • 口腔内スキャン
  • 顔貌スキャン
  • パノラマX線写真
  • セファロ(頭部X線規格写真)
  • CT撮影
  • 前歯部審美診断
  • 診断用ワックスアップ

診断用ワックスアップとは、治療前の資料をもとに、治療後に予定する歯の形を模型上またはデジタル上で設計する工程です。いきなり歯を削るのではなく、歯の長さ・幅・形、左右のバランス、必要な形成量を事前に検討するために行います。

診査結果から、正中離開、空隙歯列、乳歯晩期残存と診断しました。

検討した治療選択肢

1.残存乳歯を抜歯し、全顎矯正後にラミネートベニア6本を行う

乳歯を抜歯したうえで全顎矯正を行うと、歯の本数、すき間の配分、前歯の位置を調整しやすくなります。その後にラミネートベニアを行うことで、歯の幅と形も整えやすい計画です。

一方で、乳歯を抜歯した部分の大きなスペースを矯正で閉じる必要があり、治療期間が長くなります。舌の大きさ、治療後の後戻り、患者さんが希望された治療範囲を考えると、本症例では予想される利益に対して治療の負担が大きいと判断しました。

2.部分矯正後にラミネートベニア6本を行う

歯の位置を一部調整できれば、ラミネートベニアで補う幅を抑えられる可能性があります。

しかし、残っている乳歯を少しでも長く使うことを考えると、乳歯へ積極的に矯正力を加えることは避けたい条件でした。移動できる範囲も限られ、部分矯正を加えることによる利点が小さいと判断しました。また、空隙歯列は矯正後にすき間が再び開く可能性があり、保定が必要です。

3.矯正を行わず、ラミネートベニア6本で空隙を閉じる

現在の噛み合わせと乳歯の位置を大きく変えず、上顎前歯6本の形を調整して空隙を閉じる方法です。

診断用ワックスアップから必要な形成量を逆算し、エナメル質をできるだけ残した形成を目指せると判断しました。一方、歯を移動せずにすき間を修復物で補うため、前歯の横幅が大きくなります。理想的な歯の縦横比を完全に再現できず、治療後に歯がやや大きく見える可能性があることをご説明しました。

経過観察・ダイレクトボンディング

治療を行わず経過をみることも可能ですが、見た目の悩みは残ります。

ダイレクトボンディングは、歯科用レジンを口腔内で直接盛り足してすき間を閉じる方法です。歯質の切削を抑えやすい利点がありますが、本症例では空隙が複数の歯にわたり、補う距離も大きいため、6本の形態・左右対称性・色調・表面性状をまとめて整えることは難しいと判断しました。

ラミネートベニア6本を選択した理由

患者さんは、できるだけ治療による負担を抑えながら、自然な口元にしたいと希望されていました。

そこで、次の点を総合して、上顎前歯6本のラミネートベニアを選択しました。

  • 残存乳歯へ矯正力を加えず、現在の位置を維持できる
  • 現在の噛み合わせを大きく変えずに治療できる
  • 診断用ワックスアップとモックアップで、治療前に形の方向性を確認できる
  • 必要な形成量を事前に検討し、エナメル質をできるだけ保存する計画を立てられる
  • 歯が横に広く見える可能性など、修復単独治療の限界を患者さんが理解されていた

ラミネートベニアが他の方法より常に優れているわけではありません。本症例では、患者さんが求めるゴールと、残存乳歯、治療期間、侵襲、後戻りの可能性を比較した結果として選択しました。

治療の流れ

1.資料採得と治療計画

口腔内写真、顔貌写真、X線・CT、口腔内スキャン、顔貌スキャン等を採得し、歯の位置・形・骨格・噛み合わせを確認しました。

2.診断用ワックスアップ

顔貌データと上顎前歯6本の診断用デジタルワックスアップを重ねた正面像
口腔内スキャンと顔貌データをもとに、6本の幅・長さ・形態と、笑ったときの口元からの見え方を検討しました。
治療前の歯と診断用ワックスアップを重ねた比較画像
治療前の歯と予定形態の重ね合わせ。必要な形成量を検討するために用います。

上顎前歯6本の予定形態をデジタル上で設計しました。正面からの見え方だけでなく、歯の幅、長さ、隣接面、歯肉との関係、必要な形成量を検討しました。

3.モックアップによる確認

診断用ワックスアップを口腔内へ再現したモックアップ写真
歯を削る前に、隙間を閉じたときの歯の形や大きさ、口元からの見え方を確認しました。モックアップは完成物ではなく、治療方針を検討するための試作品です。

ワックスアップで設計した形を一時的に口腔内へ再現しました。モックアップは最終的な修復物ではなく、削る前に歯の形や口元の見え方の方向性を確認するための工程です。

4.形成とプロビジョナルレストレーション

上顎前歯6本のラミネートベニア形成後の正面写真
上顎前歯6本の形成後。ワックスアップから逆算し、必要な形成量を検討しました。
上顎前歯6本のラミネートベニア形成後の咬合面写真
形成後の上顎咬合面。隣接面を含む形成範囲を確認しています。

診断用ワックスアップから逆算し、修復物に必要な厚みを確保しながら、エナメル質をできるだけ保存することを目標に歯の表面を形成しました。

形成後はプロビジョナルレストレーションを装着しました。これは単なる仮歯ではなく、最終修復物へ進む前に歯の形、歯肉との関係、清掃性、発音、噛み合わせなどを確認するための治療用の暫間修復物です。

上顎前歯6本へ装着した2ndプロビジョナル
形成後に装着した2ndプロビジョナル(2段階目の仮歯)です。一定期間使用していただき、歯の形や長さ、噛み合わせ、清掃のしやすさなどを確認してから、最終的なラミネートベニアの製作へ進みました。

この期間中にプロビジョナルの脱離がありました。ラミネートベニア治療では、プロビジョナルや最終修復物が脱離する可能性があります。

5.印象採得・口腔内スキャン

上顎前歯形成後の口腔内スキャンデータ
形成後の口腔内スキャン。歯と歯肉の形態をデジタルデータとして記録しました。

形成した歯と周囲歯肉の形を記録するため、精密な印象採得と口腔内スキャンを行いました。この情報をもとに、歯科技工士が最終的なラミネートベニアを製作します。

6.e.max Pressラミネートベニアの製作・装着

最終修復物にはIPS e.max Pressを使用しました。これは二ケイ酸リチウムを主成分とするガラスセラミックスを、歯科技工所で加熱・加圧して製作する材料です。

試適で色・形・適合を確認した後、歯面と修復物の内面に材料に応じた接着前処理を行い、ラミネートベニアを接着しました。装着後に噛み合わせを確認し、必要な調整を行いました。

ラバーダム防湿下でラミネートベニアを接着する工程
接着時には原則としてラバーダムを使用します。唾液や湿気による汚染を防ぎ、歯面を丁寧に清掃したうえで、歯とベニアの双方へ適切な接着処理を行います。

治療上の工夫

本症例では、正面から見える面だけを覆うと、歯と歯の間の空隙や修復物との境目が残りやすい状態でした。

そこで、ラミネートベニアを隣接面まで延長し、歯間部の空隙を閉鎖しながら、歯間乳頭部との調和を図る形態を設計しました。天然歯とラミネートベニアの境目が正面から目立ちにくくなるようにし、必要な部位ではフィニッシュライン(歯を形成した部分と形成していない部分の境界)を歯肉縁下に設定しました。

歯肉縁下に修復物の境界を設定すると、見た目を整えやすい一方で、適合、接着時の防湿、余剰セメントの除去、治療後の清掃と歯肉管理が重要になります。

治療前後の変化と限界

すきっ歯治療前の口元写真
治療前の口元。
ラミネートベニア6本を装着した治療後の口元写真
治療後の口元。6本全体の形態と口元との調和を確認しました。

治療前に認められた上顎正中および前歯部の空隙を、6本のラミネートベニアによって補いました。歯の幅と形を6本で配分し、左右の前歯の形態を整えました。

一方、矯正治療で歯の位置を変えずに空隙を修復物で補っているため、治療後の前歯は横幅がやや大きく見えます。これは治療前に説明していた、本治療計画の限界です。

患者さんからは、「長年のコンプレックスが解消してとても嬉しい。受診前に想像していたよりも綺麗になった」とのお話がありました。

治療期間・通院回数・費用

  • 治療期間:約3か月
  • 通院回数:7回
  • 現在の料金に換算した場合:869,000円(税込)

費用の内訳

  • ラミネートベニア6本:132,000円×6本=792,000円(税込)
  • 前歯部審美診断・プロビジョナル(5~6歯):77,000円(税込)

現行料金に含まれる工程

ラミネートベニアの料金には、形成、印象、技工、接着前の歯面清掃、材料に応じた接着前処理、試適、接着・装着、咬合調整、装着後の確認と軽微な調整が含まれます。

前歯部審美診断・プロビジョナル料金には、審美診断、外注による診断用ワックスアップ、必要に応じたモックアップ、1stプロビジョナル、最終確認用プロビジョナルが含まれます。

治療後に使用するスプリントは保険診療で製作しており、上記の自由診療費には含まれません。保険診療の窓口負担は、保険負担割合や診療内容によって異なります。

※上記は2026年8月23日時点の当院料金から計算した金額です。症例当時の実際の支払額ではありません。検査・処置の内容によって、別途費用が必要となる場合があります。

リスク・副作用・治療の限界

  • 歯の表面を形成するため、削った歯質は元に戻りません。
  • 形成後に一時的な知覚過敏が生じたり、まれに歯髄症状が生じて追加治療が必要になったりすることがあります。
  • ラミネートベニアやプロビジョナルは、噛み合わせ、歯ぎしり・食いしばり、外傷、硬い物を噛む習慣などによって、欠け・破折・脱離する可能性があります。
  • 接着界面の着色、修復物の摩耗、天然歯との色調差、歯肉退縮による境界の露出が生じる可能性があります。
  • 修復物の周囲にプラークが残ると、二次う蝕や歯肉の炎症が生じる可能性があります。
  • 矯正治療を行わずに空隙を閉じるため、歯の横幅が大きくなり、理想的な歯の縦横比を完全には再現できません。
  • 残存乳歯は今後も使用できる期間を保証できません。歯根吸収、むし歯、歯周組織や噛み合わせの変化などにより保存が難しくなった場合は、抜歯やインプラントを含む欠損補綴を改めて検討します。
  • 修復物に問題が生じた場合は、再接着、修理、再製作、別の治療が必要になることがあります。
  • ナイトガードを使用しても、破折や脱離などのリスクを完全になくすことはできません。

治療後の管理と院内保証

装着したラミネートベニアと残存乳歯を管理するため、スプリントを使用していただき、原則として3か月ごとのメインテナンスを行います。

メインテナンスでは、修復物の適合と接着界面、歯肉の状態、清掃状態、早期接触、前歯・犬歯のガイダンス、スプリントの状態を確認します。ラミネートベニアの辺縁を傷つけないよう、使用する清掃器具と当て方にも配慮します。

当院のラミネートベニアには、装着日から3年間の院内保証があります。少なくとも6か月に1回の定期メインテナンスと、当院が製作または指定したナイトガードの継続使用などが条件です。

保証は、通常使用で修復物に不具合が生じた際の対応を定めるものであり、治療結果や歯・修復物が一定期間必ず維持されることを保証するものではありません。新たなむし歯・歯周病、天然歯や歯根の破折、事故・外傷、管理不良、指定されたナイトガードの不使用、他院等での調整・修理、患者さんの希望による色・形の変更などは、原則として保証対象外です。実際の対応は、不具合の原因を診査したうえで判断します。

すきっ歯の治療で大切にしていること

すきっ歯の治療法は、すき間の大きさだけでは決まりません。

歯の位置に問題があれば矯正治療、限局した小さな空隙であればダイレクトボンディング、歯の幅・形・色・質感を複数歯で整える必要があればラミネートベニアが候補になります。複数の方法を組み合わせた方がよい場合もあります。

当院では、特定の装置や治療法から考えるのではなく、現在の状態になった背景、噛み合わせ、清掃性、審美性、残っている歯、将来の再治療まで確認し、患者さんが求めるゴールに対してどの方法が適切かを検討します。

よくある質問

すきっ歯は、矯正をしなくても治療できますか?

空隙の位置・大きさ、歯の幅と形、噛み合わせによっては、ダイレクトボンディングやラミネートベニアで治療できる場合があります。ただし、歯の位置や骨格に原因がある場合は、修復だけでは歯が不自然に大きくなったり、削る量が増えたりするため、矯正治療を先に検討します。

ラミネートベニアは歯を削りますか?

必要な材料の厚み、歯の位置、色、予定する形によって形成量は異なります。削らずに対応できる症例もありますが、境界を目立ちにくくし、適切な厚みと形を確保するために形成が必要なことがあります。当院では診断用ワックスアップから逆算し、必要以上に削らない計画を立てます。

ラミネートベニアとダイレクトボンディングはどう選びますか?

小さく限局したすき間では、歯質を保存しやすく修理もしやすいダイレクトボンディングが適する場合があります。複数歯の幅・形・色・表面性状をまとめて整える必要がある場合は、ラミネートベニアを検討します。どちらかが常に優れているわけではなく、診査・診断によって選択します。

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